環境と昆虫
2014-11-06 (木)
11月1日、帯広畜産大学の教授の話を聴いた。
参加者の23人の殆どは年輩の方々。
昆虫との関わり無しに育った世代には、興味が湧かない話題なのかなと漠然と感じていたが、話は興味深いものであった。
昆虫は生命体としての種類、数もさることながら、微生物にも負けないほど、劣悪な環境下でも生息している。
北極のシロクマや人間の体内、原油の中にまで幼虫の形で生きているとのこと。
その環境適応能力の高さは、地球の環境がどう変化しようとも未来へつなぐための遺伝子操作を自在に行えるということなのだが、人類という種による害悪には成す術もないようである。
一時期騒がれたミツバチの減少は様々な推論がなされたが、ネオニコチノイド系の農薬が大きな要因であるという。
実は、2001年にイタリア国立養蜂研究所は、ネオニコチノイド系農薬によるミツバチへの影響を試験で確認していた。
100ppbから500ppb(1ppbは1億分の1)の間に、ミツバチを絶滅に追い込む閾値があるという結論であった。
他の具体例では、牛の塗布駆虫剤(虫下しのようなもの)は、寄生中の駆除に使用されるが、糞分解性昆虫(糞ころがしの種)に大きな害をもたらす。
家畜の糞を丸めてその中に卵を産み、その糞の栄養で幼虫が成長していく過程で、薬剤の被害を受けて死に至るのである。
また、オーストラリアでは、白人の移住に伴い、牛を移入したが、元来、大型の肉食獣がいなかった国土には、牛の糞を短時間で分解する糞分解性昆虫が生存しなかった。
そのため、糞が大量に長期間、地表面に放置されたため、悪臭問題が発生。対策として国外からの糞分解性昆虫の移入をせざるをえなかったとのこと。
身近なところでは、道東の丹頂鶴。
近年、ジャガイモを食べる鶴も出てきているのだが、死亡した鶴から有機リン系の農薬によるものと思われる事例があるという。
すべてのジャガイモが濃厚な農薬に汚染されているわけではないであろうが、散布の濃淡は当然ある。
有機リン系農薬は、神経障害を起こし、化学物質過敏症の原因となることもあるので、本州では、かなり減少しているというが、まだ、全面禁止とはなっていない。
人類を生かすための食糧生産が、環境を破壊し、他の種の生命を死に至らしめ、人間にとっても身体を蝕むことになっている。
そして、最後に、福島の放射能汚染による昆虫への残留は明確に表れており、形態異常も出てきていて、食物連鎖からいくと鳥類、獣類に汚染は確実に移行していくとのことであった。
人類の経済行為による環境破壊は、多くの種の絶滅を招いているが、その対策はなされておらず、環境を無視していては人類の未来も危ういということなのである。