クララとお日さま カズオ・イシグロ著
2021-08-30 (月)
遺伝子進化手術を受けたがために病弱となってしまった少女への、人型ロボットのク
ララの献身と切ない別れ。
臓器提供のためだけに存在させられているクローン人間を描き、映画にもなった「私をはなさないで」と同じく、優秀にさせられるなら、優秀である人間のためであれば、感情の虐殺さえも許容される未来を憂えているのだろうか。
そこには、ペットは言うに及ばず、大工道具や包丁、工具にまで心が宿り、また、それらの道具に心性を感じ取る古き良き日本人の心の豊かさ、細やかさが日本人の血を引く著者に残されているからこそ、西洋人社会においてこの作品を生み出している源なのかもしれない。