ふくしま原発作業員日誌 イチエフの真実、9年間の記録 片山夏子著
2020-04-16 (木)
著者は事故直後から現地に出向いて福島第一原発で働く作業員からの聞き取り調査を続けてきた中日新聞東京本社(東京新聞)の記者で、事故から8年目には咽頭ガンを発症。新聞に連載されていたものをまとめたものです。
復旧作業の過酷さに立ち向かいながら携わる人たちがいる一方、年間の被爆放射線量に振り回される作業員の使い捨てが横行し、副次の下請け会社が関わることで不慣れな作業員の増加、業務優占のための被爆放射線量のごまかし、当然ながらの被爆による発がん、危険区域での防護服着用に伴う灼熱作業、過酷労働に対する危険手当の搾取など、このままでは、熔解した濃縮ウラン燃料棒、デブリの取り出しに関わる熟練技術作業員の不足が危惧され、完全な終息ゴールは見えない状況のようです。
2011年3月11日から12月16日の事故収束宣言までに緊急作業に従事した2万人のみに対する長期的な健康調査、疫学調査も3000円の日当しか出ない、検査数が多くて面倒などの理由から思うように進んでおらず、結局、放射線に対する健康被害の実態はうやむやのままになりそうです。
気にかかっていた凍土遮水壁に関しての記述もありました。
320億円をかけて2017年11月に完成し、日量400tの汚染水が120tに減少したものの、台風などの大雨がくると増量するとあり、遮水壁に貫通部分があるようで、さらに、2年後には貯蔵タンクを設置するスペースがなくなるということで、海洋放出しかないとする方針に、漁業関係者は猛反対しています。
国、東電、安全委員会側が主張する放射性トリチウムは安全、希釈すれば問題ない、などの説明には、いつも疑問符が付きます。
なぜならば、トリチウム以外は除去されていると言われてきた汚染水に、様々な放射性物質が含まれていたことが明らかになったり、一般の人に対する被ばく線量の年間許容限度1mSvが事故直後に緊急時対策として引き上げられた20mSvの基準値が、8年経っても元に戻さないまま、避難区域の指定解除がなされるなど、住民の健康に対する無責任さが際立っているからです。
最近では、現場への携帯電話持ち込みも禁止になっていることからも東電の隠ぺい体質が推察されます。
事故前の懐かしい故郷を作り直そうとの強い思いがあっても、安心できる環境に戻っていない現実があるのです。
原子力発電をもう一度しっかりと考え直さなけえればならないと感じました。